6 新しい算数ドリル

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 おれはまず、おれたち双子の部屋にランドセルを置いて、洗面所で手を洗い、うがいをした。 「どうした? めずらしく難しい顔をして」 「うん」  リビングダイニングルーム入り、先にソファに座っていた五朗のおじさんの横へ座る。 「眉間にしわが寄ってる。神木イケメン遺伝子が台無しだよー」  おれのしわを伸ばそうと、眉間を指でぐいぐい押してきた。 「痛いって!」 「やっとこっちを見た」 「え?」  きょとんとしたおれに、五朗のおじさんは眉をハの字にしてこちらを見ていた。 「気づいてなかったか。さっきから生返事だし、視線も合わない。どうした、学校で何かあった?」 「何かって……学級閉鎖になった」 「そうだね。どうして学級閉鎖になったの?」 「クラスの半分以上が、体調不良で休んだから」 「それで? 何か気になることがある?」 「うん。おれはなんかヘンだと思う」  そう、ヘンなんだ。  おれのもやもやの正体は、今の状況が変だと感じているからだ。 「昨日までは、みんな元気に学校へ来てたんだ。それが今日、急にみんなが一斉に休んだ。なんかヘンだろ?」 「そうだね。その前に変わった出来事はなかった?」 「変わった出来事?」 「そう」 「三日前だけど、新しい算数ドリルが配られた」 「新しい算数ドリル?」
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