6 新しい算数ドリル

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「そう。クラスの半分以上が、発熱などの体調不良で休んだんだよね?」 「うん」 「今回の状況を分析すると、脳に刺激を与えすぎていることが原因だろうね」 「脳に刺激?」 「そう。脳がオーバーヒートを起こしたんだ。だから回復するために、体が本能的に『休む』を選択してるんだろう」 「それでみんな休みになったんだ」 「おそらく、この新しいドリルを一生懸命やった子どもほど、休んでいるんじゃないかな」  そうか……。  じゃあ、手島を見返してやろうとしていた夢人は、一生懸命ドリルをやってんだろうな。  夢人のことを思うと、悔しくなってきた。  ふと視線を感じると、五朗のおじさんがじっとおれを見つめていた。 「な、何だよ……」 「おじさんはかなしい」 「なんでだよ!?」 「志音は一生懸命じゃなかったんだねー?」 「で、でも、今回ばかりはおれの行動が正しいじゃん!」 「今回はね。ふだん、こんなに勉強していないかと思うと……キッズエージェントは知識も知能も重要なんだよ?」 「わ、わかってる」 「俺が直々に勉強をみようか?」  ひぃ、やめてーっ!  五朗のおじさんは基本スパルタだから、どんな勉強をやらされるか、想像もしたくない。 「怜音にみてもらうから大丈夫!」 「遠慮しなくていいんだよ?」 「おじさんに遠慮なんかしないし! そ、そうだ、このことを怜音に伝えないと」 「それはそうだ」  五朗のおじさんはおどけて言ってみせたけど、すげーニヤニヤしている。  うーん、これは……。  見逃してもらっているうちに、何とかした方がよさそうだ。  それは怜音にまた頼むとして。  おれはテレパシーを送るために、意識を集中した。  怜音の顔を思い浮かべ、イメージした怜音に呼びかけた。
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