1 怪盗じゃない怪盗、何を盗む?

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「待ちなさい、怪盗ノット!」  宙に浮いているおれたちを見上げて、警官たちと一緒にいる愛菜が叫んだ。 「ミッション完了! それではみなさん、ばーいばーい!」 「待て!」 「逃げるな!」  警官たちが口々に叫ぶ中、 「怪盗ノット、必ず捕まえてみせるわ!」  悔しそうな愛菜が、捨てゼリフを口にした。  ぐんぐん高度を上げれば、豆粒になっていく愛菜に向けて、言葉を返す。 「ま、おれたち、怪盗じゃないけどね」  この高度では、本人に届かない。 「怪盗とは仮の姿。オレらの正体は……」 「国際共創組織CREO(こくさいきょうそうそしきクレオ)のキッズエージェントだからな」  エージェント、つまりスパイのようなもの。  怪盗じゃない怪盗。  それがおれたちの正体だ。 「やっべ、もうすぐ門限の九時だ!」  小学校の時計を見て、怜音が叫んだ。 「マジか! 急げ!」  おれたちはホバージェットの出力を最大限に上げて、スピードを出した。  ここからはスピード勝負だっ。  小学校をあっという間に離れ、月に照らされ、夜の闇をかける。  おれたちが目指すのは、高級マンションの最上階にある、でっかいルーフバルコニーがある部屋。  時間にして五分。  見えた! 
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