2 双子は小学4年生

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「神木くん、怪盗ノットが現れたなんて、びっくりだよね」  隣の席の高野夢人(たかのゆめと)が話しかけてきた。 「そうだな」 「大泉さんがすごく悔しそうにしてるよ」  高野がメガネのつるを触りながら、女子に囲まれた愛菜をじっと見る。  おれもつられて、視線を向けた。  昨夜対峙した少女探偵は、実は、おれと同じクラスだったりする。 「愛菜ちゃん、昨日お父さんと一緒に警備したんでしょ?」 「怪盗ノットって手強いんだね」 「愛菜ちゃん、大変だったね」 「大変だったけど、くやしいの! パパをいっつも困らせてるから、捕まえたいのに!」  愛菜がぎりりと奥歯を噛みしめた。  ふっとおれを見た愛菜は、おれと視線が合うと、ぎっとにらんできた。  え?  おれ、なんでにらまれてんの!?  にらむべきは怪盗ノットであって、おれじゃないよな!? 「みなさーん、静かにしてください。先生の話を聞いてくださーい」  ざわつく教室に響いたのは、うちの担任、広瀬明日香(ひろせあすか)先生の声だ。  ボブカットが似合う、先生歴三年目の先生。  いつもウザイくらい元気なのに、今日はしょんぼりとしている。 「放送で流れたように、小学校にドッチボールがありません。残念ですが、五時間目の合同体育のドッチボールは中止です」 「ええっ、うそーーっ!? ありえなーい!!」  クラスのみんなは大ブーイング。  広瀬先生がとたんに眉をハの字にした。 「だ、だって仕方がないじゃない! ボールはないんだよ。先生だってやりたかったの!」  先生が大声で言っても、ブーイングは止まらない。  広瀬先生はオロオロするばかり。  しゃーない。  ここは、おれたちがやるっきゃないでしょ!
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