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「神木くん、怪盗ノットが現れたなんて、びっくりだよね」
隣の席の高野夢人が話しかけてきた。
「そうだな」
「大泉さんがすごく悔しそうにしてるよ」
高野がメガネのつるを触りながら、女子に囲まれた愛菜をじっと見る。
おれもつられて、視線を向けた。
昨夜対峙した少女探偵は、実は、おれと同じクラスだったりする。
「愛菜ちゃん、昨日お父さんと一緒に警備したんでしょ?」
「怪盗ノットって手強いんだね」
「愛菜ちゃん、大変だったね」
「大変だったけど、くやしいの! パパをいっつも困らせてるから、捕まえたいのに!」
愛菜がぎりりと奥歯を噛みしめた。
ふっとおれを見た愛菜は、おれと視線が合うと、ぎっとにらんできた。
え?
おれ、なんでにらまれてんの!?
にらむべきは怪盗ノットであって、おれじゃないよな!?
「みなさーん、静かにしてください。先生の話を聞いてくださーい」
ざわつく教室に響いたのは、うちの担任、広瀬明日香先生の声だ。
ボブカットが似合う、先生歴三年目の先生。
いつもウザイくらい元気なのに、今日はしょんぼりとしている。
「放送で流れたように、小学校にドッチボールがありません。残念ですが、五時間目の合同体育のドッチボールは中止です」
「ええっ、うそーーっ!? ありえなーい!!」
クラスのみんなは大ブーイング。
広瀬先生がとたんに眉をハの字にした。
「だ、だって仕方がないじゃない! ボールはないんだよ。先生だってやりたかったの!」
先生が大声で言っても、ブーイングは止まらない。
広瀬先生はオロオロするばかり。
しゃーない。
ここは、おれたちがやるっきゃないでしょ!
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