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「おいおいおいタツキ坊ちゃん、イチャイチャすんのはオマエら二人だけの時にしてくれよ」
リングの上からケイゴくんが言った時、再びブザーが鳴った。おそらく次のラウンドの始まりの合図なのだろうけど、二人が向き合うことはなかった。
「あらケイゴ、男の嫉妬は、醜いだけよ」
「誰がオマエみたいな女に嫉妬するんだよ!!」
「やだやだ、必死になっちゃって。自分より弱いと思ってるタツくんに彼女がいて、アンタにいないからって焦ってるんでしょ」
これ以上論争を繰り広げても無駄だと感じたのか、ケイゴくんはチッと舌打ちをして黙ってしまった。
トモミさんが本気でケイゴくんをけなしているわけじゃないことは僕には分かったけど、ケイゴくんは気付いているのだろうか。
「タイスケ、ちょっとは強くなった?」
トモミさんはそう言ってタイスケに近付いていって、なぜかタイスケの坊主頭をジョリジョリと撫ではじめた。
「相変わらずいい剃り心地ね」
タイスケが返事をする前に、トモミさんがそう言った。坊主頭やスポーツ刈りの髪を触ると気持ちがいいという女の人はたまにいるけれど、トモミさんもどうやらそんな中の人達らしい。
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