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様子がおかしい里井兄弟
雨の降る中、街を歩いていると、突然背後からナイフで刺された。水溜まりの中に僕の胸から流れ出した血がボタボタと落ちる。どうすることも出来ずにその場に崩れ込んだ。不思議と、痛みはなかった。
そんな夢を見た。目を開けて、ここが自分の部屋だということに驚く。汗をかいていた。僕は半身だけ起こすと、カーテンを閉め忘れた窓の外に目をやった。
まだまだ外は暗い。その上、空に月はなく、どんよりとした雲がこれでもかとばかりに敷き詰められていて、微かに雨音が聞こえた。そこでようやく、さっき刺されて痛みが無かったのは、夢だったからだと気付いた。
物騒な夢だ。何者かに刺されるなんて、もしかすると今の僕の立場じゃ有り得るかもしれないから、正夢じゃありませんようにと願うばかりだ。
夜明けまでには、まだまだ時間がある。
午前一時五分。枕元に置いてある携帯電話が、メッセージの着信を告げている。僕は目をこすりながら携帯電話を開いた。
着信 三件。
僕がとある役目を担うようになって、それまでは皆無だった着信が増えた。
僕の名前は、後藤康介。市内の公立高校に通う二年生だ。
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