龍護る女たち

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 王妃の娘、王女の神名を授ける儀式はごく一部の人のみが見守る中、ひっそりと行われました。  王女はまだ幼く、何もわからないのでしょう。神名を授かるということが、これからの彼女にどういう道を示すのか。  金丸の、王妃の娘、それは私の敵ということにございます。ですが、王女として神名を授かる。私と同じ道を歩み始めた王女の先を危惧している私もおります。  そんなことを思う前に、私は私の心配をせねばなりません。と言っても、もう私は死を待つのみの身に成り果てております。 「王女に神名を授けたお前には「殺してくださいませ。父上様とおじい様。殺された二人の夫にも会いとうございます」  私などはもう用済みなのでしょう。でしたら、死にとうございます。  一人目の夫、阿摩和利様はおじい様である護佐丸様を殺した方。その後、阿摩和利様は父上様と賢雄に討たれます。  その後は私は父上様の命により賢雄に嫁ぎました。始めは賢雄を許せませんでしたが、徐々に打ち解け、幸せな時間を過ごしている時に父上様が亡くなり、玉座を継いだ弟もすぐに亡くなってしまいます。  それから、すぐに私の幸せは壊れます。  父上様の臣下であった金丸が叛乱。弟の妻や幼い子らを殺し、自らが玉座に座りました。  玉座に座った金丸は賢雄を殺しました。  私は賢雄に逃がされ、母上様方を頼り玉城の地に逃げのびました。  母上様方と静かに暮らしたかっただけなのです。それすらも許されることはありませんでした。 「もう……私にとっては、この国で生きることが苦痛なのです」  神名は授けました。神女としても王女としても、もうやることはないでしょう。  この首里城でまがい者の王たちや、まがい者を讃え仕える臣下たちを見る度に腹を立て続けるのにも疲れてしまいました。  私が神名を授けた王女と、その兄である王子。二人の幼い兄妹を殺してやりたいと思うほど、憎いと恨み思い続ける私の愚かさにも嫌気がさします。  悪いのは金丸と目の前の王妃。私の恨むべき敵はこの二人だけなのです。  この二人の子だからと、幼い王子と王女を恨むのは違う。この気持ちを正当化してしまってはいけないのです。  わかっているつもりなのですが、恨む気持ちを捨てられない私が嫌なのです。 「百度踏揚はもう必要ないのでしょう。でしたら、もう私を自由に「何をほざいている」  王妃が私の言葉を止める意味がわかりません。  私になどもう用などないのでしょう? でしたら、早く殺してほしいのです。  もう恨めしいお前たちの顔を見るのも、醜い自分の本性と向き合うのにも疲れてしまったのです。 「王女に神名を授ける。それとは別に、お前にはやることがある。百度踏揚にはまだ生きていてもらわねば困る」 「で、すが……もう用済みだと仰ったではないですか……?」 「私の言葉を勝手に遮って決めつけているのはお前自身だ」
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