2人ならきっと大丈夫だから

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里村さんが「この顔、やばいね」とトワの写真を指さす。裸の女性を抱きしめ、汗を滲ませ余裕のない表情を浮かべるトワはあまりにも描写がリアルすぎて、さすがに私も戸惑った。 この撮影のために鍛えたと言っていた身体はどの角度から写しても完璧で、里村さんが「エロいねぇ」と笑いながらトワの腹筋を指で撫で始めた時はさすがに止めた。 「私、相手がリリロジのトワならワンナイトでいいから抱かれたいな〜」 トワのグラビアを見ながら里村さんはうっとりした顔でそう口にした。その呟きに私は何と返事をすればいいか分からず、黙って野菜ジュースを飲んだ。 「ねぇとわちんも思わない?この美しさを独り占めできるなら一晩だけでいいから抱いてって思わない?」 「里村さん、昼間から抱くとか言わないでください。あと私、トワをそういう対象として見てないので」 「嘘だ、嘘だ。さっきからめっちゃトワを凝視してるもん。とわちん、絶対この女性を自分に置き換えて妄想してたでしょ?」 無茶苦茶すぎる言い掛かりに、私は思わず「それは里村さんですよね?」と言い返してしまった。里村さんは「そうよ」と頷き、雑誌をめくる。次のページの写真を見た私はあまりの衝撃に息が止まりそうになった。 それはベッドに腰掛けた女性と床に跪いたトワの写真で、トワが手で持ち上げた女性の足の甲にキスをしていた。そのカットがあまりにも綺麗で、なぜかそれがトワが女性と絡む写真よりずっと官能的に見えた。私は思わず「これやばいですね」と写真を指さしたが、里村さんは「え?普通じゃない?」と首を傾げられた。 その後もギリギリの過激な写真が続いたが、足にキスをする写真を超える衝撃はなかった。20ページをじっくり堪能した後、里村さんはまた頭を抱え始めた。 「かっこよすぎて泣けてきた……早くトワに会いたい……」 「ライブ、横浜も埼玉も年明けですもんね」 「やっぱり遠征も視野に入れるべきだったわ。というか関東会場がツアー終盤に固まってるスケジュールがアンバランスなのよ!」 まだ11月上旬なので、私と里村さんが参戦する1月上旬の横浜のライブまでまだ1ヶ月以上ある。リリロジは今月も大忙しで、2週目に福岡で2日間、月末にも名古屋で2日間ライブをする予定だ。その合間に広島で青春メモリーの企画もあるため、歩も東京を離れる日が多いと言っていた。 青春メモリーといえば……つい先日、私は無事に11月の平日休みを取得できた。歩に仕事を休んで欲しいと言われた水曜日と次の木曜日の2日で有給休暇を申請し、無事に上司から承認がおりた。 私のスケジュールを見た里村さんに「なにこの連休。彼氏と旅行?」と突っ込まれた。「そんな感じです」と答えると、里村さんに「ラブラブだね〜」と茶化された。
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