待つのは 得意じゃないから

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「無事にアルバムとDVDはゲットできた?」 私が尋ねると、莉子は「ばっちり!」と袋の中身を見せてくれた。 新品のアルバムがなぜか2枚……ああ、初回限定盤と通常盤をどっちも買ったのね。それとDVDが1本、予約特典のポスターが入っていた。 「透和(とわ)はどこで予約したの?」 「私はネットで予約したよ。発送メール来てたし、帰ったらもう届いてると思う」 「よくネット予約できたね〜。私、全然サイトにアクセスできなくて、やっと繋がったと思ったらアルバムの初回限定盤が売り切れててさ。リリロジの人気、本当にえげつないよ」 莉子はそうため息をつきながら袋から筒状に丸められたポスターを取り出す。そしてその場でポスターの封を切り、開き始めた。 「ちょっと、ここで開けないで」 私が慌てて制すると莉子は「だって!」と声を荒げた。 「どのポスターが当たったか気になるじゃん!ハルユキのポスターがいいな〜」 「いや、ソロポスターがあるのはトワだけだから……」 「あれ?そうだっけ?」 リサーチが甘い莉子はDVDの予約購入者特典のポスターがランダムなのは知っていたようだが、ポスターの種類までは把握できていなかったらしい。 ちなみに莉子が引いたポスターは、アルバムのジャケットと同じ写真のポスターだった。 これ以外にもポスターにはいくつか種類があり、そのうちの1つに人気メンバー・トワのソロポスターがある。ソロポスターがあるのはトワだけで、他のメンバーはない。そんなグッズ格差ができてしまうくらいトワの人気は圧倒的だった。 「ねぇ、透和。今からうちでDVDの上映会やらない?」 「ごめん。すごく行きたいけど、今日は先約があって」 私が両手を合わせて謝ると、莉子には「えー」と残念そうな顔をした。 莉子には申し訳ないが、今日は同じ会社の先輩・水多(みずた)さんと食事に行く約束があった。 正直、水多さんと食事に行くより莉子とDVDを見る方がずっと有意義だろう。でも5回断っても諦めずに食事に誘ってくる水多さんに私は根負けしており、今日はどうしても彼に会わなければいけなかった。 「莉子、ごめんね。週末は空いてるから、その時に上映会しよう」 「分かった。じゃあ土曜は絶対に空けておいてよ?」 「うん、空けとく。じゃあ私、今から駅で待ち合わせだから」 「あ、駅まで一緒に行こうよ。私もこのまま帰るからさ」 私は莉子と一緒にエスカレーターに向かう。莉子は買ったばかりのアルバムを手に取り、ジャケットを眺めながら「聴くのが楽しみだな〜」と笑みを零した。
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