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秋雨前線
夏休みがあけて2学期が始まっても、僕らは相変わらず相合い傘の仲だった。
だけど、傘の下には沈黙しかなかった。
あまりにも気まずかったせいか、そのうち傘は2つに分かれた。
そして、すぐに訪れた秋雨前線。
雨宿りしたバス停で『彼女』は僕に尋ねた。
「秋雨前線が来る理由知ってる?」
僕はなんの興味もなく言った。
「知らない。」
彼女は悲しそうに笑って言った。
「夏の恋を冷ますためらしいよ。」
そして、秋雨のなかをかけ出して行った。
僕はあとを追わなかった。
彼女が馬鹿だったからいけないんだ。
僕の恋を、そのへんの恋と一緒にしやがった。
僕をそのへんの奴らと一緒にしやがった。
彼女が馬鹿だったからいけないんだ。
くやしくて、僕は秋雨のなかを歩き出した。
頬を伝うのは、ぜんぶ雨粒だ。
強がりながら、僕は鼻をすすって歩いた。
恋を冷ますという、雨の下を……。
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