2学期の雨

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2学期の雨

「なんかさ、こんなときに話すこともないね。」  下校中、降りだした雨をさけてバス停のひさしに入っているときに、『彼女』が後を追うようにしてかけ込んできた。そして長い沈黙のあとの一言。彼女は作り笑いをしていた。 「……そうだな。」  話すことが本当に思いつかないから、僕はうなずいた。  話が途切れた、と思ったら、つなぎのように彼女が言った。 「9月もなかば過ぎると雨が増えるでしょう?」 「……秋雨前線?」 「そう。あれ、なんでだか知ってる?」 「別に。知らない。」  どうしてこんな話をしているんだろう。  全然興味が湧かない。  『彼女』が話しているのに。  以前なら………  付き合い始める前なら───。
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