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3 ガヤガヤと煩い喧騒が、まるでステレオのボリュームを絞るようにして耳から離れていく。 『………なんすか…これ』 左手を 持ち帰った 情? これが…その意味だと? テーブルには明らかに高価な輝きを放つプラチナのリングが置かれていた。 装飾のないマリッジリングだ。 「大事な奴がいたんだろうって…墓参りぐらいさせてやれって…今更になってなんだけどなぁ」 燕さんがさらに内ポケットから小さな箱を取り出す。 「圭介…お前さ、察しが良いからもう分かるよな?」 俺はテーブルに置かれたリングと、小さな箱を見つめた。 頬杖をついていた手の指先を唇に当て、軽く爪を噛む。 「庵司は雪乃ちゃんに渡すつもりなんかなかった…お前に雪乃ちゃんを託して出て行ったんだからな。」 『分かってますよ…』 「今、雪乃ちゃんに渡すべきじゃないと思う」 『だったら!なんで俺んとこに持ってくるんすか!一緒に墓に入れちまえば良かったんだ』 フイとソッポを向く俺に燕さんのため息が聞こえる。 「俺もそう思った。ただ…俺は庵司が幸せそうにしてるのを見たことがなかったんだ…雪乃ちゃんに会うまでな。アイツ、マジでいつ死んでも良いと思ってるような奴だったし…ほんとにめちゃくちゃだったんだよ…それが、最後の一芝居の時…初めてアイツの手が震えてんの見たんだ…お前に、そんな髪の色止めろとか言って、こんなの押し付けんのもどうかと思ったんだが…俺が持ってるわけにもな」 苦笑いする燕さん。 肩で大きくため息をつく俺。 テーブルの指輪を左手の薬指に通して見た。 『さぁ〜いあく…』 燕さんに向けて左手を突きつける。 「ハハ、背格好だけじゃなく指のサイズまで同じかよ。じゃあアッチのサイズも同じかね」 ニカっと笑う燕さんにそのまま中指を突き立ててフンと鼻を鳴らす。 『悪いがそっちは俺の方がデカいってことにしとくよ。死人に口なしってな。これ…預かればいいんだね?』 俺は左手薬指にハマった指輪に落胆しながら肩を竦めた。
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