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5 『ただいまぁ〜』 玄関を開けると中から暖かい空気が流れてくる。 パタパタと足音をさせて雪乃が出迎えてくれた。 まだ時間にして朝の6時を回った頃だ。 空もようやく白んでお目覚めだっていうのに、雪乃はいつも起きて俺を迎える。 「おかえり〜、寒かっただろ?コーヒー淹れるよ」 そう言って羽織っているカーディガンを翻す。 前よりも痩せた細い手首を掴んで引き寄せた。 胸の中にギュウッと引き入れて首筋に鼻先をよせ、雪乃の香りを吸い込む。 雪乃がクスッと笑って 「圭介さん…冬の匂いがする」 と囁いた。 可愛い… 小動物のような丸い瞳で見上げてくるから、ゆっくり頬に手を添えて、ふんわりと唇を塞いだ。 閉じた目を開きながら離れると、胸元にしがみついた雪乃が恥ずかしそうに笑った。 「コーヒー…淹れるから…手洗っておいで」 『…うん…ありがと』 洗面台で手を洗いながら鏡を見つめた… ブリーチのし過ぎで痛み切った髪がふわふわと揺れる。 白いブロンド。 雪乃は、いつになったら…俺を見てくれるだろうか。 ザァーッと音を立てる水を掬い、軽く顔を洗った。 庵司で居る。 俺が決めた事だ。 俺は、雪乃の為に死なない。 俺は 雪乃の為に 生きるんだ。 ポタポタと顎先から水滴の滴る顔を見つめ、下唇を噛み締めた。 ポケットにリングケースを入れたままハンガーラックにコートをかける。 リビングに入ると、暖かい朝食が湯気をあげていた。
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