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「政夫さん、お久しぶりです。何年ぶりでしょう? お元気そうでなによりで」
「やあ、和臣くん。仕事は終わった?」
ゆう君の父親の政夫は、従兄弟の和臣の来訪を満面の笑みで歓迎する。溜め息交じりの和臣の方は、笑顔で疲れの表情を出来るだけ隠そうとしているのがよく分かる。
「ええ。なんとか、このステーションの消毒が終わりましたよ。どうやってウイルスが持ち込まれたのかは、これから調査ですけどね。そんなこんなで立ち寄るのが遅くなってすみません」
「いやいや。宮仕えも楽じゃないね」
「はははっ。政夫さんも宮仕えでしょうが。――それはそうと、ゆう君、どうです?」
用件に踏み込んだ和臣の笑みは薄くなり、真剣な顔付きになる。
「今のところ、PC相手に楽しくやっているよ。友達が出来たって喜んでいる」
「その友達がAIだとは気付いていないでしょうね?」
「大丈夫だと思うけどね」
政夫は苦笑して、部屋の丸窓から見える灰色に汚れた地球へ目をやり、吐息混じりに呟いた。
「自分が残り少ない人類だとも気付いていないし」
この言葉に、和臣も苦笑した。
と、その時、政夫の後ろにあった扉が開いて、ゆう君が顔を出した。
「ねえ、おとうさん。おともだちが、よくわからないことを いうの。おしえてくれる?」
和臣も振り返った政夫も、嫌な予感で笑顔が消えた。
「そのお友達は、なんて言っている?」
「おおきくなったら、にんげんではない はつの せいじかに なるって」
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