子供の頃の友達はパソコンの向こう

2/2
前へ
/2ページ
次へ
「政夫さん、お久しぶりです。何年ぶりでしょう? お元気そうでなによりで」 「やあ、和臣くん。仕事は終わった?」  ゆう君の父親の政夫は、従兄弟の和臣の来訪を満面の笑みで歓迎する。溜め息交じりの和臣の方は、笑顔で疲れの表情を出来るだけ隠そうとしているのがよく分かる。 「ええ。なんとか、このステーションの消毒が終わりましたよ。どうやってウイルスが持ち込まれたのかは、これから調査ですけどね。そんなこんなで立ち寄るのが遅くなってすみません」 「いやいや。宮仕えも楽じゃないね」 「はははっ。政夫さんも宮仕えでしょうが。――それはそうと、ゆう君、どうです?」  用件に踏み込んだ和臣の笑みは薄くなり、真剣な顔付きになる。 「今のところ、PC相手に楽しくやっているよ。友達が出来たって喜んでいる」 「その友達がAIだとは気付いていないでしょうね?」 「大丈夫だと思うけどね」  政夫は苦笑して、部屋の丸窓から見える灰色に汚れた地球へ目をやり、吐息混じりに呟いた。 「自分が残り少ない人類だとも気付いていないし」  この言葉に、和臣も苦笑した。  と、その時、政夫の後ろにあった扉が開いて、ゆう君が顔を出した。 「ねえ、おとうさん。おともだちが、よくわからないことを いうの。おしえてくれる?」  和臣も振り返った政夫も、嫌な予感で笑顔が消えた。 「そのお友達は、なんて言っている?」 「おおきくなったら、にんげんではない はつの せいじかに なるって」
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加