美宇の友達

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 ▽▽▽ 空き箱にはカラフルなボタンが数多くあった。 その中には私もいる。 美宇(みう)はおままごとが大好き。 ボタンを家族に見立てて、遊ぶのが彼女の日課だ。 私も美宇と遊ぶのは楽しかった。 昨日はママ役だった。一昨日は犬だった。 今日は一体、どんな役をもらえるのだろう。 わくわくしながら、そのときを待つ。この時間も私は好きだ。 赤いボタンをつまみ上げる。 あなたはお父さんね、と言われている。 もっと喜べばいいのに。でも仕方ない。 赤いボタンには私みたいな意識がないんだもの。 赤いボタンだけではない。この中で意識があるのは私だけだ。 「あなたはーー」 そう言って美宇は私をつまむ。とうとう私の番がきた。 「あなたはボッチャンね。ボタンのボッチャン」 ボッチャン?こうして意識を持ってから、考える力がついた。 だけど〝ボッチャン〟なんて言葉は知らない。 「美宇の初めてのお友達だよ」 ボッチャン。友達。私は反芻する。 もしかして、ボッチャンって名前だったりする? 美宇みたいに名前がついたの? どうしよう。嬉しすぎておかしくなりそう。 この気持ちをどうやって表現しよう。 私ーーううん。これからは、自分のことをボッチャンと呼ぼう。 ボッチャンに美宇のような顔があれば、きっと満面の笑みを浮かべていることだろう。 名前と友達という存在意義をもらった。 それはとても大きな役だった。 ただ在っただけのボッチャンは、美宇の言葉一つで不確かな存在から確かな存在へとかわった。 そんな彼女の一番の友達であろうと決意した。 それぐらいに嬉しかったから。
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