白の花

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白の花

森の入口に私は突っ立っていた。 森の中の1番大きな木の根本に白の花が咲いているらしい。 「らしい」となってしまうのはおじいちゃんからしつこいほどいくなと言われていたからだ。 「白の花」だか「白い花」だか、わからないけどそんな花が咲かなくなってしまうからと。 でも、おじいちゃんが亡くなった満月の日にだけいきなさい。その前にも、後にも行ってはいけないよ。とシワクチャの目は言った。 昨日おじいちゃんは亡くなった。 運なのか、意図的なのか、今日が満月の日だった。 藍色の空には雲一つなく、月だけが輝いていた。 心配になって家の方向を見る。親に無断で抜け出してきてしまった。 どうせこのまま行方不明になったっていい。 私を探す人なんていないのだから。 小学校6年でナイフ1本で森に入れるようになった。 友達といるよりそっちの方が楽しくて、気づけば孤立していた。 そんなのいいって思った。だって私には森があるからと。 でも、親が離婚して、お母さんが再婚して、結婚相手がギャンブル好きで、家庭が崩壊していって、お母さんと夜逃げして、隣町の都会に住んで、森が私のそばから無くなった。 何がいけなかったのか、いじめられるようになって。 私なんて存在する意味がないと、遺書まで書いて、自殺まで考えて、おじいちゃんに止められて、おじいちゃんも亡くなって。 そんなおじいちゃんが残したもの。白の花。おじいちゃんに見せてあげる。 早速森へ入っていく。 上を見上げるとずいぶん人が入っていないのだろう。木が生い茂り、月が見えない。 そんな道を進んでいくと急に光が入った。 久しぶりの光に目が慣れない。 大きな木が現れた。根本には花が咲いている。白い花だ。 白の花の周りは輝いていた。 おじいちゃんの命が詰まったみたいに。 おじいちゃんは見てほしかったんだろう。 自殺しそうな私を永遠に止めるために。 おじいちゃん、ありがとう。 私にはやらないといけないことができたよ。 ありがとう。おじいちゃん。
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