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4.両想い≠付き合っている?
小野寺さんの存在を知ったのは、二年生に上がり同じクラスになってからのことだ。
彼女とは違う小学校出身だったし、一学年六クラスもあるわが校では同じ学年に名前も顔も知らない人間がいるのは当たり前だった。
ましてや小野寺さんも僕も目立つタイプではなかったし、全くの他人のままで一年間を過ごしてしまったというのはあながち無理からぬ話だと思う。。
クラスメートとなってからも特段小野寺さんを意識することはなかった。僕の愚かな目と鈍い頭は、同じ教室の中に存在する小野寺さんの魅力になかなか気づけずにいたのである。特に会話することもなく、興味を持つことさえなく、そんな二人の距離がぐっと狭まったのは一緒に図書委員に任命されたのがきっかけだった。
図書委員は週に一度、放課後図書室の業務の手伝いをするのが仕事だった。委員会活動の中でも割と負担が大きいだけに、自ら率先してやりたがる人間は皆無だ。限られた学級活動の時間の中で決定を見ることはできず、最終的に週一しか活動のない文化部の連中だけが集められてくじ引きをさせられた。運動部はほぼ毎日部活動があるからとという名目で除外されたのだが、僕たちのような文化部の人間に比べると彼らは圧倒的に発言力が強かったから、パワーバランスで無理やり押し切られたというのが本質だと思う。担任の教師もとにかく生徒同士の話し合いによって決まりさえすればいいといった塩梅で、特に異論を唱えようとはしなかった。
くじ引きはある意味、生贄の羊を選ぼうという残酷な儀式だったはずなのだけれど、十数人の中からそれぞれ女子一人、男子一人のくじを引き当てたのが僕と小野寺さんだったというのは、今となってみれば僥倖と言わざるを得ない。もしかすると僕は一生分の運をその時に使い果たしてしまったのかもしれないとすら思う。
図書委員として毎週火曜日の放課後は図書室に通うことになり……それでもまだよそよそしく会話がなかった僕たちに転機が訪れたのは、図書館だよりの制作を任されたことがきっかけだった。
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