5 瀬永ともっと近づきたい!

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「へぇ。原田さんすごく協力的じゃん。よかったね、敵じゃないって分かって」 「……敵って言葉も正しいか分かんないけど。まぁでも、よかったけどさ。東花だったら、絶対歯が立たなかっただろうし」  昼休み。給食を食べ終わってこうして恵子と話す時間が、やっぱりすごく貴重。 「そんなことないんじゃない? だって、環境委員の仕事も手伝ってくれているわけじゃん。それに、部活だって、勧められたんでしょ? 後、バスケの特訓も二人でしているわけだし。脈がないわけじゃないでしょ」 「まぁ嫌われてはないと思うさ……」  瀬永はカッコいいから、特段女子とつるまないとはいえ、人気があると思う。  そんなカッコいい人が、何の長所もない私を好きになるかというと、それはちょっと疑問。 「私と話したりするのは、たぶん瀬永がすごくいい人だからだと思う。なのに、好きになってしまったこと自体、お門違いというか、身分不相応というか……」 「だ~。もう、そうやって卑屈になるのやめなよ。好きになるのに、お門も身分も関係ないでしょ。もっと自信もちなよ」 「……東花にも同じようなこと、言われた。もっと自信持ってって」 「そうだよ。こないだだって、山口さんから部活やめたらって言われた時も、強く言い返してたんだし。少なくとも、小学生のころから変わっていると思うよ」  そうだ。今までなら、「どうせ私なんて……」って殻に閉じこもったままだった。名前負けしたくないって思うだけで、そのまま。 「確かに、私少しは変われているのかもしれない。山口さんにちゃんと言い返したのもそうだし、彼に相応しい女の子になりたいって思って、部活にも打ち込めるようになったし」 「そうそう。いいよね、そうやって一人の男を好きになっていい方向に変わっていくの。羨ましいよ。ほら、私は好きな人……いないし」 「……そうなの?」 「うん……と、特にいないし……」  なんだか、プツプツと途切れるように言う。  もしかして……。
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