4 敵わない……

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「じゃあ、いってきます」 「いってらっしゃい」  今日からついに部活の朝練。もう五月になるのもあって、辺りは明るい。空気を口いっぱいに吸い込むと、体が満たされる感じがする。 「ふ~ふふ~ん、ふ~ん」  鼻歌もついつい歌ってしまう。  その時。交差点に人影を二つ見つけた。  遠目から見ると、二人ともうちの中学指定のジャージを着ている。  あの人たちも、部活の朝練なんだろうか。  そんなことを思っていると、二つのうち一つが、こちらをくるりと振り返った。 「あ、おはよ! 白石!」 「!」  爽やかな笑顔。大柄な体。 「せ、瀬永、お、おはよ……」  胸が大げさなほど、ドクンと鳴る。  そうか、男バスも今日から朝練か。  顔が少し熱くなり、急いで瀬永の方に向かう……はずだった。 「あ! 舞じゃん。おはよ」  もう一つの影も振りかえる。サッと、一瞬で体が冷える。 「……と、東花……」  瀬永と、仲良しそうに、二人で信号を待っていた。 「おはよ~。今日から朝練頑張ろうね」 「あ、あの、あのさ。二人は今、たまたま合流したの?」 「ん~? ああ、いや、違うよ。琉偉も朝練だから一緒に行こっかって約束して、家の前で待ち合わせて来た」 「俺ら、家も近くて幼馴染なんだよな」  サァッ……と更に体から何かが引いていった。  イエノ マエデ マチアワセ。  オサナナジミ。  ちぐはぐに、音声が頭の中で鳴り響く。 「そ、そうなんだ。あは、あはははは」  顔が引きつって、うまく笑えない。 「ふ、二人とも、とても、仲よさそう、だね」 「まぁね。もう腐れ縁だし、正直家族みたいな感覚だけどね」  朝日に負けないほどの眩しい笑顔。 「へ、へぇ……」  その笑顔とは反対に、私は闇に突き落とされたかのように、目の前が真っ暗になっていった。
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