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「じゃあ、いってきます」
「いってらっしゃい」
今日からついに部活の朝練。もう五月になるのもあって、辺りは明るい。空気を口いっぱいに吸い込むと、体が満たされる感じがする。
「ふ~ふふ~ん、ふ~ん」
鼻歌もついつい歌ってしまう。
その時。交差点に人影を二つ見つけた。
遠目から見ると、二人ともうちの中学指定のジャージを着ている。
あの人たちも、部活の朝練なんだろうか。
そんなことを思っていると、二つのうち一つが、こちらをくるりと振り返った。
「あ、おはよ! 白石!」
「!」
爽やかな笑顔。大柄な体。
「せ、瀬永、お、おはよ……」
胸が大げさなほど、ドクンと鳴る。
そうか、男バスも今日から朝練か。
顔が少し熱くなり、急いで瀬永の方に向かう……はずだった。
「あ! 舞じゃん。おはよ」
もう一つの影も振りかえる。サッと、一瞬で体が冷える。
「……と、東花……」
瀬永と、仲良しそうに、二人で信号を待っていた。
「おはよ~。今日から朝練頑張ろうね」
「あ、あの、あのさ。二人は今、たまたま合流したの?」
「ん~? ああ、いや、違うよ。琉偉も朝練だから一緒に行こっかって約束して、家の前で待ち合わせて来た」
「俺ら、家も近くて幼馴染なんだよな」
サァッ……と更に体から何かが引いていった。
イエノ マエデ マチアワセ。
オサナナジミ。
ちぐはぐに、音声が頭の中で鳴り響く。
「そ、そうなんだ。あは、あはははは」
顔が引きつって、うまく笑えない。
「ふ、二人とも、とても、仲よさそう、だね」
「まぁね。もう腐れ縁だし、正直家族みたいな感覚だけどね」
朝日に負けないほどの眩しい笑顔。
「へ、へぇ……」
その笑顔とは反対に、私は闇に突き落とされたかのように、目の前が真っ暗になっていった。
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