4 敵わない……

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「まーいっ!」  ハッとして振り返る。 「と、東花」 「どうしたん、なんか今日ずっとぼーっとしてるじゃん」 「そ、そうかな。べ、別に何もないけど」  自分でも、すごくわざとらしく誤魔化したなって思う。 「今日の部活もずっと上の空だったし、なんというか、普通じゃないというか……。なんかあったの」 「……べ、別に、本当に何もない……」  俯いてそう呟く。 「……無理に話せとは言わないけど……一人で抱え込まないでね。私でよければ、話聞くからさ」  東花が真剣な顔で私を見る。  それが何だか腹立たしくも、申し訳なさもあって、心の中がぐちゃぐちゃになる。 「ね、ねぇ」 「ん?」 「東花って……好きな人いるの?」  あ……しまった、と言ってから思った。  いくらそのことで頭がいっぱいだからと言って、あまりに脈絡(みゃくらく)がない。それに、まだ出会って日が浅いのに、そんなこと話し合えるような仲かも微妙だ。 「す、好きな人……」  東花はそう呟いて、黙ってしまった。  沈黙が、気まずい。  ごめん、こんなこと急に聞くべきじゃなかったよね~なんて言いたい私と、ほら黙ってないで言いなよ、瀬永が好きって! ……なんて言おうとしている私がいる。  ぐるぐると考えていると、東花が口を開いた。 「いるよ。好きな人」 「え」 「好きな人っていうか、彼氏だけど……」 「え、えええ」  か、かかか彼氏?! 「小さいころからずっと好きで、小六の時に両想いになれたんだけど。今ちょっと微妙でさ」  ガーン、と頭を金属バットで殴られたような、ショックが体中に走る。  小さいころからずっと好き。  瀬永と幼馴染。  小六の時に両想い……。 「その人が住田(すみだ)中だから、福中じゃなくて、こっち来たんだけどね」  もう、その一言で、全て憶測が正しかったんだとわかってしまった。  瀬永と東花は付き合っている。  東花は瀬永のために福田中ではなく、ウチ……住田中に来た。  今ちょっと微妙なんて言っていたけど、それでもすごく仲の良い、カップル……。 「そ、そーなんだ……へ、へぇ……」  全く感情のこもってない、平らな声が出た。  十八時なのもあって、辺りはもう暗くなっていた。
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