4 敵わない……

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「ウス! 白石」 「おはよ、瀬永……」  日曜日。今日も瀬永とバスケの特訓……。  でもいいんだろうか。彼女がいるのに、私と二人きりで練習って……。東花は嫌がらないんだろうか。  まぁ、相手が私だから「こんな何の長所もない女、恋愛に発展するわけない」なんて思われているんだろうけど……。 「今日はパス練しよっか」 「……うん」  ダムダムとボールをついて、ほいっと投げる。 「白石、チェストパスして」  チェストパスは、仮入部の一番最初にやった、胸から投げるパスだ。 「……はい」 「お、いいね。じゃあ今から俺投げるから受け取ってみて」  ダムダム……ダンッと、バウンドしてこちらに返ってくる。 「どう? 受け取ってみて」 「……う、受け取りやすい」 「だろ~。チェストパスも基本なんだけど、試合中にパスしたりするのは、バウンドパスがいいんだ。空中で投げると、どうしてもボールを途中で取られたりしちゃうから。バウンドパスだとそういうこともないし、何より受け取りやすい」 「そ、そうなんだ」 「相手のことを考えて、パスをする。試合は一人でやるわけじゃないから。チームメイトのことを考えたり、敵チームのことを考えるのも大切」  そう言って、またダンッとパスを決めてくる。 「じゃあ、俺が取れやすいように、どこに投げるか考えて、バウンドパスしてみて」 「……うん」  ダムダム……ダンッ。ダムダム……ダンッとお互いにパスをしあう。  瀬永が受け取りやすく……瀬永が受け取りやすく……。  瀬永……。 「小さいころからずっと好きで、小六の時に両想いになれたんだけど」  東花の言葉が、頭の中で響く。  ……ダダッ……デーンデーンデーン。  ボールが手から滑って違う方向へと跳ねていく。 「ご、ごめん……瀬永……」 「どんまいどんまい、そんなこともあるよ」  瀬永が走って取りに行く。 「じゃ、また投げるよ」 「せ、瀬永」 「ん~?」 「ごめん、ちょっと用事思い出した。帰る」  そう言い残して、逃げるように走った。 「え? し、白石? どこ行くの? 用事って?」  もう、耐えられなかった。  瀬永とこれ以上いても、苦しくなるだけ。  どんなに私が好きでいても、瀬永は私のことを好きになることはない。  これじゃあ、一方的にボールを投げているだけだ。  受け取りやすいようにと思って投げても、受け止めてもらえない。 「ごめん……瀬永……」  何かが壊れてしまわないようにと、こらえていたけど、目に張っていた膜は崩れ落ちた。
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