4 敵わない……

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「まーいっ! 一緒に帰ろ!」 「……う、うん」  ズキン、と胸が痛む。  今日のバスケはなるべく瀬永を見ないように、考えないように、必死でやった。  バウンドパスをするたびに、ふと頭の中で姿がよぎってくるから、結構辛かった。 「今日も練習ハードだったね~」 「……う、うん」  東花はそんなことつゆ知らず、いつも通り笑顔でフレンドリーに接してくる。  東花は何も、何も悪くない、でも、その笑顔を見ると体をぞうきん絞りされているみたいに、ギュッと苦しくなる。 「……ねぇ、舞。大丈夫?」 「……えっ」 「やっぱ最近おかしいよ。表情も暗いし、何言っても上の空だし」 「べ、別に何も……」 「誰かに何か言われたり、されたりしたの?」  こないだと同じく、すごく真剣な表情。 「ごめん、おせっかいかもしれないけど、気になってしまって……」 「いいよね」 「えっ」 「東花は、可愛くて、性格も良くて、バスケもできるから、私みたいなゴミみたいな存在の人間の気持ちなんかわかんないよ」  一息に、声がでる。  話し出すと止まらなかった。 「私みたいに、名前にコンプレックスを抱えることもないし、苦しい思いをすることもないんだ」  心の奥底で溜まっていた、どろどろとしたものが噴き出てくる。 「だから、いいよね。本当、いいよね」  言い終わると、少し息切れがした。  ……ああ。私って、最低だ。  こんなこと言ってしまって。一体、何の意味があるんだろう。私はすっきりするかもしれないけど、東花は傷ついて、困るだけだ。  本当に、私はどうしようもない、ゴミだ。だから瀬永に選ばれることも……。
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