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「まーいっ! 一緒に帰ろ!」
「……う、うん」
ズキン、と胸が痛む。
今日のバスケはなるべく瀬永を見ないように、考えないように、必死でやった。
バウンドパスをするたびに、ふと頭の中で姿がよぎってくるから、結構辛かった。
「今日も練習ハードだったね~」
「……う、うん」
東花はそんなことつゆ知らず、いつも通り笑顔でフレンドリーに接してくる。
東花は何も、何も悪くない、でも、その笑顔を見ると体をぞうきん絞りされているみたいに、ギュッと苦しくなる。
「……ねぇ、舞。大丈夫?」
「……えっ」
「やっぱ最近おかしいよ。表情も暗いし、何言っても上の空だし」
「べ、別に何も……」
「誰かに何か言われたり、されたりしたの?」
こないだと同じく、すごく真剣な表情。
「ごめん、おせっかいかもしれないけど、気になってしまって……」
「いいよね」
「えっ」
「東花は、可愛くて、性格も良くて、バスケもできるから、私みたいなゴミみたいな存在の人間の気持ちなんかわかんないよ」
一息に、声がでる。
話し出すと止まらなかった。
「私みたいに、名前にコンプレックスを抱えることもないし、苦しい思いをすることもないんだ」
心の奥底で溜まっていた、どろどろとしたものが噴き出てくる。
「だから、いいよね。本当、いいよね」
言い終わると、少し息切れがした。
……ああ。私って、最低だ。
こんなこと言ってしまって。一体、何の意味があるんだろう。私はすっきりするかもしれないけど、東花は傷ついて、困るだけだ。
本当に、私はどうしようもない、ゴミだ。だから瀬永に選ばれることも……。
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