1 変わりたい!

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「はい! 私、学級委員長やりたいです!」  やはり、山口さんは学級委員長に立候補した。前からなんとなく気づいていたけど、学級委員長をやるのは勉強がよくできる子とかじゃなくて、明るくて活発で運動神経の良い、そういう子だ。 「図書委員、給食委員、風紀委員、保健委員、放送委員……残りは環境委員(かんきょういいん)ですが、誰かやりたい人はいませんか」  また教室がシン……となる。 「環境委員って、当番で朝来て草むしりするんでしょ」 「そーそ、しかもゴミステーションのゴキブリ退治もするって……」  ひそひそと、また声が聞こえる。  この学校の環境委員の仕事がとても大変だということは、私も知っている。  お姉ちゃんが中学校に通っているという友達が「環境委員だけはマジでならないほうがいいみたい。仕事が重すぎて本当に大変らしいよ」と教えてくれた。  その情報はみんなにも浸透しているようで、さっきまで委員にいろんな人が立候補していたのが嘘みたいに静か。 「おいおい、誰もやらないのか~? 白石が困ってるだろ? 誰か立候補しないのか?」  少しもやっとする。困ってないと言ったら嘘になるけど、それじゃあまるで私が「誰でもいいから環境委員になれよ」って思っているみたいじゃないか。  ……さっき書記と司会進行を押し付けられたのがすごく嫌だったから、誰かにそう押しつけるなんて、絶対にしたくないのに。 「しょうがないな。じゃあ、この人ならやってほしい、みたいな推薦にしようか。この人がやってほしいとか、あるか?」  この人がやってほしい……。  そんな方法にしたらやりたくない人がまた……。 「白石さんはどうでしょうか」  背中にひゅっと冷たいものが落ちる。  今度は、副学級委員長に立候補した、藤田(ふじた)さん。 「司会進行とかすごいスムーズですし、てきぱきと委員の仕事ができそうだと思って」  藤田さんは、同じ小学校じゃない。  でも、たぶんわかったのかもしれない。  私が、何でも引き受ける、ちょろい奴だと。 「賛成です。私も、白石さんいいと思います」  山口さんも声を上げる。 「じゃあ、白石、環境委員やってもらってもいいか」 「……はい」  なんでこうなってしまうのだろう。  人間は平等だなんて偉い人は言ったのだろうけど、違うと思う。  少なくともクラスには階級があって、私は下の中の下だ。権利を持った人に逆らえず、従うしかない。  唇をギュッと噛みしめて黒板に白石、と書いた。
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