4人が本棚に入れています
本棚に追加
/80ページ
「へ~。いいじゃん青春じゃん」
昼休み。恵子がにやにやと笑う。
「瀬永、私のこと、どう思ってるんだろう……。いつも仕事手伝ってくれるし、悪口言われたら庇ってくれる。二人でバスケの特訓して……。友人として、仲良くしてくれているのかな。それとも……なんて、思っちゃって」
「ほう……聞いてみればいいじゃん」
え、と声が漏れる。
「私のこと、どう思っているのって」
「き、聞けるわけないじゃん! そんな突拍子もないこと聞けるわけないし、は?ってなったらどうするの! 無理だよ!」
早送りしているみたいに、一息で言葉が出た。
「でも、このままずっとよくわからない関係が続くのも、嫌じゃない?」
「……まぁ、そうだけどさ……」
「瀬永くん、彼女はいるの? いないの?」
「東花はいないって言ってたけど……。でも、実際はどうかわかんない。特段女子とつるむ感じじゃないけど、かっこいいからいそうだよね」
「なるほどなるほど……じゃあさ」
しっかりと目を見てくる。
「ちょっとジャブ入れてみる感じでさ。『瀬永彼女いるの』って聞いてみたら」
「ええっ」
「『私のことどう思ってるの?』よりは聞きやすくない? ちょっと舞のことを意識させるためにさ」
「え、で、でもそれって、好きって言ってるも同然じゃない?」
「そうかな? 彼女いるのってただ好奇心で聞くこともあるし、そんなに身構えなくてもいいと思うよ。向こうはちょっと意識するようになるかもだけど、それもいいことじゃん。関係が変わるスイッチになると思うよ」
「そ、そうかな。そんな、うまくいくかな……」
「でも、ずっとこのままなのも、モヤモヤするでしょ」
「……うん」
「じゃあ、やってみたら?」
確かに、ずっとこのまま「私のことどう思ってるんだろう」って思いながら過ごすのは、嫌だ。
勇気がいるけど、するしかない。
「……わかった。頑張ってみる」
「そうそう、その調子!」
恵子が白い歯を見せて、グッと親指を立てる。
その様子が、さっき瀬永が小指を立ててきたのを思い出させる。胸がきゅうっと締めつけられた。
最初のコメントを投稿しよう!