5 瀬永ともっと近づきたい!

6/12
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/80ページ
「へ~。いいじゃん青春じゃん」  昼休み。恵子がにやにやと笑う。 「瀬永、私のこと、どう思ってるんだろう……。いつも仕事手伝ってくれるし、悪口言われたら庇ってくれる。二人でバスケの特訓して……。友人として、仲良くしてくれているのかな。それとも……なんて、思っちゃって」 「ほう……聞いてみればいいじゃん」  え、と声が漏れる。 「私のこと、どう思っているのって」 「き、聞けるわけないじゃん! そんな突拍子もないこと聞けるわけないし、は?ってなったらどうするの! 無理だよ!」  早送りしているみたいに、一息で言葉が出た。 「でも、このままずっとよくわからない関係が続くのも、嫌じゃない?」 「……まぁ、そうだけどさ……」 「瀬永くん、彼女はいるの? いないの?」 「東花はいないって言ってたけど……。でも、実際はどうかわかんない。特段女子とつるむ感じじゃないけど、かっこいいからいそうだよね」 「なるほどなるほど……じゃあさ」  しっかりと目を見てくる。 「ちょっとジャブ入れてみる感じでさ。『瀬永彼女いるの』って聞いてみたら」 「ええっ」 「『私のことどう思ってるの?』よりは聞きやすくない? ちょっと舞のことを意識させるためにさ」 「え、で、でもそれって、好きって言ってるも同然じゃない?」 「そうかな? 彼女いるのってただ好奇心で聞くこともあるし、そんなに身構えなくてもいいと思うよ。向こうはちょっと意識するようになるかもだけど、それもいいことじゃん。関係が変わるスイッチになると思うよ」 「そ、そうかな。そんな、うまくいくかな……」 「でも、ずっとこのままなのも、モヤモヤするでしょ」 「……うん」 「じゃあ、やってみたら?」  確かに、ずっとこのまま「私のことどう思ってるんだろう」って思いながら過ごすのは、嫌だ。  勇気がいるけど、するしかない。 「……わかった。頑張ってみる」 「そうそう、その調子!」  恵子が白い歯を見せて、グッと親指を立てる。  その様子が、さっき瀬永が小指を立ててきたのを思い出させる。胸がきゅうっと締めつけられた。
/80ページ

最初のコメントを投稿しよう!