5 瀬永ともっと近づきたい!

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「ありがとう東花……。東花は、瀬永のこと好きにはならなかったんだね」  軽い気持ちで言うと、東花は「え?」と顔をしかめる。 「当たり前。全然タイプじゃない」 「ええっ」 「あいつ、昔は超泣き虫で。サッカーやってたんだけど、佳偉に比べたらてんでダメで。よく人気のない所とか、私の前で泣いてたよ」 「そ、そうなんだ……」 「まぁ、佳偉がすごすぎたんだけどね。背番号は常に十番のエースで、小学校卒業時にいろんなクラブからスカウトされてたしね」 「へぇ……」  サッカーやってたんだ。そういえば、バスケも初心者って言ってたな。その割にとても上手だけど……。 「あ、もしかして、瀬永にバスケ教えたのって、東花?」 「いや、私のお兄ちゃん。泣いてばかりの琉偉を気にかけて、よくバスケに誘ってたよ。私もたまに混じってやってたけどね」 「……そうだったんだ」  何もかもうまくいってそうな瀬永にも、そんな過去があったんだな。 「瀬永も十分運動神経良いのに、お兄さんよっぽどすごい人だったんだね。そんなエースと付き合うなんてさすが東花」  なんとなく、褒めるニュアンスでそう言った。  笑ってくれると思った。  だけど、途端に東花の顔が曇った。 「……うん。そう、だね」  目に光が消え、少し俯いている。  ……何かいけないことを言ったんだろうか。 「じゃあ、そろそろ授業あるから」 「う、うん」  東花はくるりと背を向けて去って行った。  そういえば前に、うまくいってないみたいなこと言っていたな。  あまりお兄さんに触れないほうがいいのかもしれない。  瀬永のことはこれからも相談したいけど……。ほどほどならいいかな。いいよね。  教室に戻って、英語の準備をする。  後ろの方をちらりと見ると、瀬永は男子と冗談を言って笑っていた。  ……瀬永。  部活もテスト週間でお休みだし、委員会も2週後くらいにある。  あ~。早く日曜にならないかなぁ。  日曜になって、その出来事を恵子と東花に報告したい。  そう思うと、ひとりでにニヤついてしまう。  ワハハハハ……という瀬永と男子たちの笑い声が響いていた。
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