5 瀬永ともっと近づきたい!

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「こないだ、俺に彼女いるのって聞いてきたけどさ。白石はどうなの」 「……へ?」 「彼氏、いるの?」  一瞬、自分が何を聞かれているのかわからなかった。  ……彼氏、いるの?  それは、私に恋人がいるか否かの質問、ということ……? 「い、いないよ」 「ふーん」  瀬永は遠くを見ている。  私は俯いて、そのまま黙った。  少し、沈黙が流れる。こないだと、同じような空気に、ちょっと体がむずむずする。 「……好きな人は?」 「え」 「好きな人はいないの?」  心臓をぎゅっと掴まれているような、そんな感覚が体の中で起きる。 「……いる」  精一杯、言葉を吐き出すようにそう言う。 「そう」 「そっちは?」  私がそう言うと、遠くを見ながらも、一瞬表情が揺れた。 「そっちは、好きな人とかいないの?」 「……いる」  少し、ぶっきらぼうな言い方だった。 「……そうなんだ」  もう、瀬永のことを直視できなかった。  瀬永には彼女はいないけど、好きな人がいる。  それが、どういうことなのか、考えてしまう。  いくらなんでも、自意識過剰なのかもしれない。瀬永は、かっこよくて、明るくて、優しくて、完璧な男子。そんな人が、私なんかを好きになるのかな……。  本当のことは、瀬永にしかわからない。  でも、ちょっと期待してもいいのかな。  もしかしたら、私たち、両想いなんじゃないのって。 「しゅ、シュート練続けようぜ」 「う、うん」  何事もなかったかのように、瀬永がダンダンとボールをつく。  その背中が、何だかとても大きく感じた。
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