5 瀬永ともっと近づきたい!

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「ひ~っ。やっと終わったね~」 「ホント、マジで疲れた~」  恵子が「う~ん」と気持ちよさそうに伸びをする。 「初めてのテスト、なんか終えたら達成感があるね」 「え? 初めてじゃなくない? 入学したときには入学テストがあったじゃん」 「いや、まぁそうだけど、そういう意味じゃなくて、こうして部活を休んで勉強する定期テストが初めて、ってこと!」 「ああ、なるほどね。確かに、入学テストとは比にならにくらい、スカッとするね」  でしょ~と返し、教室を出る。 「それより、こないだの日曜、ついに付き合うことになったんでしょ?」 「ちょっと! なってないって!」 「だって。彼氏の有無聞かれた後、好きな人いるかどうか聞かれたんでしょ? これはもう、決定的でしょ」 「べ、別に好奇心かもしれないじゃん! なんとなく気になったとかさ、ほら、私が前に彼女いるか聞いたから」 「いやもう向こうも意識しまくりでしょ~。それに舞だって、今はそんな風に言ってるけど、心の中では両想いかもって期待してるでしょ」 「……う、ううう」  そう言われると、もう何も言い返せない。 「これからも、その調子で仲良くなって、告白だね!」 「ええっ。こ、告白なんて無理だよ」 「でも、ずっとよくわからない関係なのって、いやって言ってたじゃん。じゃあもう、告白しかないよ」 「う、うううう」 「じゃ、美術室こっちだから」  またね~と恵子は去って行った。  こ、告白。  彼女いるか聞くだけだった時も、心臓がバクバクして止まなかったのに。そんなハードルの高いこと、私にできるのかな。  って、そもそも、瀬永が私のこと好きって前提で話が進んでるけど、そうじゃないかもしれないじゃん。本当に、ただ何となく聞いてただけかもしれないし、ほら、私思いこみ激しいし……。  体が熱くなっていく。顔が赤くなってたら、部活中東花にまたからかわれるかもしれない。  ……ちょっと、顔洗っていこ。  急ぎ足でトイレに向かった。
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