1 変わりたい!

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「……え」  本当は朝弱いのに、当番だからすごく頑張って早起きした。  なのに……。 「誰も……いない」  ホームルームまで後二十分。さっきまで一人で草むしりしていた。誰か来たら、今度こそ話しかけて友達になれるかも、なんて思っていたけれど……。  「大変そーじゃん」「やりたくないね」昨日そう愚痴をこぼしていた女の子二人を思い出す。  ……愚痴(ぐち)をこぼすのはいいけど、せめてやらないといけないことはやろうよ。  土がめりこんで、爪が茶色くなっている。  あ~。もうほんと嫌になる。  やりたくないものを押し付けられて、仕事をしているのは私だけ。  中学校。きっと何かが変わると思って期待していた。 「……全然、全然変わってないや」  小学校の頃から、同じ。周りの人も、私自身も。  きっと私はこれからもずっと下の人間として生きて、バカみたいな日々を過ごす。  誰からも気にかけてもらえず、ずっと……ずっとこのまま……。 「ねぇ」  ハッと顔を上げる。 「白石さん、だよね? 一人で何してるの?」  そこには、「かっこいい」と話題になった、後ろの席の男子……確か……。 「せ、瀬永(せなが)くん?」 「あ、名前覚えてくれてたんだ。嬉しい」  にこりと笑う。 「なんか一人でうずくまってるように見えたから」 「あ、いや、草むしりしてて……。環境委員の仕事で、本当は一年生皆でやるはずなんだけど、私しか来てなくて……」 「なんだそりゃ。環境委員の人たち、すげー無責任だな」 「まぁでも、みんなやりたくないけど仕方なしに委員になった感じだったし、そこはちょっとわかるというか……」 「いや、たとえやりたくないとしても、しなきゃいけないことはしないといけないだろ」  さっき私が心の中で呟いたことを、そのまま話してくれる。 「そ、そうだよね……」 「俺、手伝うよ。この辺草むしりしたらいい?」 「え、いや、悪いよ。そんな……。瀬永くん環境委員じゃないし」 「委員じゃないとしても、クラスメイトがこんな仕事一人で抱えてるなんて、見過ごせないよ。二人でやった方が、楽になれるしな」  にっと白い歯を見せる。  心がじんわりと温かなものがしみ出ている感じがする。  ……嬉しい。  さっき、周りの人も変わらない、なんて思っていたけど。ちゃんと気づいて気にかけてくれる人もいた。 「ありがとう。瀬永くん」  噛みしめるように、丁寧にその言葉を発する。 「いいって。早く終わらせようぜ」  瀬永くんはとても(まぶ)しい笑顔だった。
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