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「白石さんって、何小だったんだっけ?」
「あ、えっと富川小」
「お、じゃあ一番都会にある大きな小学校じゃん。シティガールだな」
「いや、そんな、今原小と変わらないよ」
「お、俺の出身小学校覚えてくれてたんだな」
「……うん」
花壇の水やりを終え、二人で教室へと急ぐ。
「当番って、金曜まであるの?」
「うん。一年二年三年って週ごとに順繰り回っていくみたい」
「じゃあ、俺、明日も来ようか?」
「えっ」
「また白石さんが一人で仕事やってるの、見てられないし。俺でよかったらだけど、手伝うよ」
「な、なんで」
「ん?」
「なんでそこまで……」
嬉しい気持ちもあるけれど、びっくりした。
なんで、瀬永くんはここまでしてくれるのだろう。
私なんて、何の長所もない。名前負けって言われるくらい、暗くて、地味で、かわいくもない。嫌な仕事を押し付けられても何も言い返せない、そんな女子なのに。
「白石さんって、すごい頑張る人だなって思って」
「え」
「俺、頑張ってる人をみるとすごく応援したくなるというか、うまく言えないけど。何でもかんでも仕事サボったり、人に押し付ける人間、めちゃくちゃ苦手なんだよな。白石さんはそんな人たちとは違って、文句も言わず頑張ってるからさ。力になりたいなって思って」
「……そう」
なんだか、心の中がぽかぽかする。
まだ、会ってほとんど日にちが経ってないのに、私のこと、ちゃんと見てくれているだけじゃなくて、力になりたいと思ってくれている人がいる。
そのことが、ものすごく嬉しい。
「じゃあ、明日もお願いしてもいい?」
「おう。じゃあ、今日より早めに行くよ」
「うん、ありがと」
瀬永くんの額に流れる汗がきらりと光った。
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