23人が本棚に入れています
本棚に追加
水原と本部を訪れたその日の夜は妙に目が冴えた。
じっとして本を読むなり勉強するなりしても落ち着かない。ホットミルクを飲んでみても眠気が顔を出す気配もない。
体がむず痒いのは風呂に入ってないからじゃない。むしろ俺は湯船にしっかり浸かる派だ。
腹の奥でエネルギーが燻っている。思いっきり体を動かしたい。
そんな訳で俺は外に出た。
家がある通りは人けがない。昔は繁盛していたと囁かれているけど、今では新たに開通した大通りに根こそぎ奪われ物寂しいシャッター街と化している。
たまに通るのは酔っ払いやチンピラのなりそこない。だけど、今は俺は1人。むしろいたら腰を抜かす。
街灯がなくても視界は良好。昼と見間違えるほどに眩い月明かりが差す晩にも似た白黒の世界。
幾千も存在する過放次元を適当に訪れ、修行に打ち込んだ。
相手をしてくれるのは以前ハカセに作ってもらった飛行する機械式の球体。
バレーボールくらいの大きさで中心のくぼみから熱線のレーザーを放つ。
球体は2.3メートル離れ不規則に飛び交うトンボのように周回している。
最初は2つ起動していた機体も今は5個まで増やした。
放たれる赤いレーザー。温度は控えめにしていても当たればかなり痛いし熱い。
部屋着の白い半袖も数カ所焦げだ。腕に直撃した所は赤く腫れ、自前の氷で応急処置している。
最初のコメントを投稿しよう!