23人が本棚に入れています
本棚に追加
「分かった。場所は?」
『詳細はメールで送ります。この前行った港の近くにある研究所が集まった地域なんですけど』
南東部の開発地帯。以前任務に駆り立てられ場所だ。
「そこなら知ってる。埋立の所だろ?」
『そこです。タクシー使うなら後で金払いますよ』
タクシー代が出るとは、随分と羽振りがいいじゃないか。
「いや、必要ないよ。あと20分もしたら着くと思う」
立ち上がって救急箱を元の位置に戻す。四角い外枠に上手く入らずガタガタと手こずった。
『家近いんですか?』
当然の疑問に思わず立ち尽くす。……しまった。そこまで考えてなかったな。
「まぁ、そんなとこ。とりあえず着いたら連絡入れるから」
適当に誤魔化し収束を図る。深く詮索はせず電話口からは「そうですか」とだけ返ってきた。
『じゃあ待ってますんで、また後で』
「はいよ」
通話が切れた。画面の灯が消え、室内が黒一色に染まる。
こんな夜中に不気味な建物が並ぶ開発地帯。具体的な話はないけど、肝試しをやるって感じじゃなかったな。
折坂と研究所か……。単なる偶然だろうか?
2階に上がっていつものワイシャツと黒のスラックスに着替える。残念ながら焦げだTシャツは部屋着から寝巻きに格下げだ。
一旦外に出てから銀のブレスレットのボタンを操作し異次元へのゲートを開く。
裏側を通れば、余裕を持って宣言した時間で間に合うだろう。
最初のコメントを投稿しよう!