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家を出てから15分後に指定の場所に着いた。
大型トラック2台は余裕ですれ違える大きな緑色のアーケード。その片隅には『中央都第二工業化学開発地帯』の薄汚れた看板が設置されている。
吹き荒ぶ風は湿気を帯び、肌寒さはない。
ここ最近剥き出しの灯りを地に落としていた月も今日は薄い雲に覆われている。俺は夜目が利くから問題はない。
足音に続きどこか呆れたような声を掛けられた。
「マジで早いっすね。この辺に最初からいたんですか?」
暗がりから折坂が顔を出す。
退院後ともありやつれてはいるが顔色は悪くない。
少し幼くなったような気がしたのは髪が下ろされているからだろう。
「まぁ、そんなところ。タイミングが良かったよ」
半信半疑の目を向け「ふーん」とだけ口にする。本当の事までは話す必要ないか。
辺りを見渡し折坂は言う。
「あれ?あの女の先輩は一緒じゃないんですか?」
女の先輩とは水原の事だろうか。
「いる訳ないだろ。連れて来いとも言われてないし、もしそうだったとしても来るのは俺だけだよ」
昼間ならまだしも、こんな時間に叩き起こしたらしばらく恨まれかねない。起きてた俺でさえ若干不機嫌だっつーのに。
折坂は右手の人差し指でこめかみをかく。
「それもそうか。出来れば2人で来て欲しかったんだけどな」
水原もセットって事はこの前の続き、強いやつ探しでもする気か?
「それで?ここまで連れて来られた理由を教えてもらおうか」
大した用事なんだろうなと含みを持たせて俺は言った。
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