深夜潜入作戦

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 「その事なんですけどね。この前宿り身がどーのこーの言ったじゃないですか」  言ってたな間違いなく。どれだけ驚かされたことか。  「あぁ、覚えてるよ」  「実はこれ内緒だったみたいで他言したらまずいみたいなんですよ。教えてくれたやつにがっつり叱られまして」  バツが悪そう後頭部を叩く。  あったり前だろ。俺でもキレるわ。反省しろ。  「そいつに今すぐ教えた相手、つまり先輩方を呼び出せって言われたんですよ。それで今に至るって訳です」  「つまりそいつがここに来ると?」  「その通りっす」  そいつはいい。宿り身を言いふらす間抜けの面を拝んでやろう。  内心で歪んだ笑みを浮かべ指の関節を鳴らす。  「あ、来ました。あいつです」  さて、どこのどいつだ……。  「あっ……」  「はぁ……」  ついぞ、そいつの顔を見る事は叶わなかった。  なぜならそいつは、やたらと大きいパーカーのフードを深々と被っていたから。  「お前か……」  「君か……」  教えた相手が俺だと知り、渦月は安心したように声をこぼした。  状況を飲み込めない折坂は俺と渦月を交互に見る。  「あれ?知り合い?」  「マブダチだヨ」  「嘘つくな。ただの顔見知りだろうが」  どこまでも適当を突き通す渦月。2回くらいしか顔合わせてないだろ。  「とまぁ、冗談はさておき……」  腕を組みながら渦月は折坂をじろりと見る(ような気がした)。  「折坂氏、あれほど宿り身を人には告げるなと口酸っぱく言ったのに。君は約束を守れないのかい?」  変わらぬ口調で折坂を咎める。怒気のオーラがゆらりと立ち込めた。
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