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「ざっけんな。お断りだ」
折坂はバッサリ切り捨てられた。しかし、熱意は本物のようで「そこをなんとか」と食い下がっている。
さっきから何を見せられてるんだろう……。
渦月は折坂に構わず鏡に話掛けた。
「君は鏡と言ったかナ。君の話は僕の耳にも届いてるヨ」
「へぇ、どんな?」
跳ねっ返り娘も自分の噂話には興味があるらしい。眉をひそめ続きを促す。
「戦い好きの奇妙な女だってサ。まぁ、一般人に魔力を行使していると聞いた事はないから、特にマークはしてないけど」
「はっ、奇妙な女ね。違いねーや」
自分に向けられ評価を鼻で笑うと、鏡は渦月を射すくめた。
「あたしもあんたの事知ってるよ。よく働くグレイスの犬。裏であんたを恨んでるやつも少なくないんじゃないの?」
結構きつい事言われているのに渦月が動じる様子はない。
「犬で結構。僕も異論は無いネ。悪事を働くやつにいくら恨まれても痛くも痒くもない」
2人が持つ自信がなせる業か。言葉の応酬の中でも火花が散る事はない。
俺が知っているよりも、もっと深いアンダーグラウンドな会話。時間帯と場所の背景も相まって、知らない世界に迷い込んだ気分になる。
ふと、最初に聞いておかなければならない疑問が浮き上がった。
「そう言えば、どうして鏡はここに?」
鏡は腰に手を当てやれやれと頭を振った。
「愚問だな。ここいらもあたしの縄張りなんだ。見知った顔が2つばかりあったから声を掛けたんだよ」
「ふーん、縄張りねぇ」
鏡の発言にいち早く反応したのは渦月だった。
「なら君にも少し手伝ってもらおうかナ。報酬は期待してもらっていい」
「ほぅ、面白ぇ。聞かせてみろよ」
意外にも鏡はすぐに乗ってきた。やっぱり現金の魔力は底知れない。
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