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広大な敷地内に点在する大小様々な建物。どれも社用の駐車場を確保していて立地間隔は十分に空いている。
作業停止中のクレーン車は大きく項垂れ、それが遠目に3台も続く。あたかも未解明の巨大生物が佇んでいるようだった。
規則的に立っている街灯は全て消えていた。一定の時間を過ぎると電源を落とす設定なのだろう。
視界の悪さを気にもせず渦月は先頭を歩き、明後日の方角を見て鏡が続き、俺と折坂が最後尾を並んで歩く。
鼻歌でも歌い出しそうな折坂。学校で俺を殴りかけた後のように好奇心がその目に映っている。
ほんの数日前の折坂と今の折坂。思い返して見比べた時に生じる微妙なズレがどうしても気になっていた。
「なぁ、折坂。1つ聞きたい事があるんだけどさ」
「何ですか?」
そう、これだこれ。明らかにおかしい。
「お前喋り方どうした?電話の時から敬語なんて使って。そんなに頭を強く打ったのか?」
普通だったら俺の発言の方が間違っている。年下が敬語で話すのは至極正しい礼儀作法だ。
だけど、こと折坂に関しては違和感でしかない。
出会い頭で人の鼻先に鉄拳を叩き込もうとし、先輩後輩関係無く話すのが折坂という人間だと思い込んでいたのに。
折坂は冴えない面で口を開いた。
「実は目を覚ました後でお袋に散々どやされたんですよ。そん中で先輩達には失礼の無いようにしろってかなりきつく言われたんで、言いつけを守ってるだけです」
「あぁ、瞳さんか……。納得した」
俺も般若の面がチラついた笑顔で怖気付いた身だ。とやかく言えそうにもない。
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