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ビリっと折坂をとりまく空気が張り詰める。体の震えは恐れか武者振るいか。
「野望って言ってたな。何をしようってんだ?」
折坂は虚空を眺める。初めて教室で話をした時と同じ冷酷さがそこにはあった。
「復讐ですよ。俺の知り合いを襲ったやつをぶっ殺す」
憎悪由来の不敵な笑みを浮かべ、暗闇を睨みつける。その先に復讐の対象者を見据えていた。
ただならぬ迫力はすぐに顔を隠してしまった。俺の見間違いかと疑うくらいにさっきまでの折坂に戻っている。
「昔世話になったおっさん達、それに古い仲間も相次いでやらてるんです。どこからか居場所を嗅ぎ付けて手当たり潰し回ってる」
折坂の右手は強く握りしめられ震えていた。
「それで俺もできる限り情報を集めたんです。そこで出会ったのが目の前の渦月です」
会話は渦月まで聞こえていた。首だけで振り返り、またすぐに前を向く。
「丁度手掛けている事件の1つだったからネ。一時的に協定を結ぶ事にしたんだ。利害も一致してるし、彼にしか持ちえない情報も興味深かった」
「そこで宿り身を知った。それで夜な夜な探し回ってたって事か」
1つ1つの点が明るみに出て線で結ばれていく。
「まったく、調べが済むまで大人しくしてろと言ってたのに。宿り身の漏洩元が僕だと知られたら酷い目に合ってたヨ」
折坂の軽はずみな行動を渦月はまだ根に持っていた。そればっかりは俺も渦月の肩を持たざるを得ない。
「おっと、無駄話をしている内に着いたようだネ」
立ち止まった先にあるのは角ばった白の3階建ての建物。周りに比べても一際大きく、学校や病院にも似た外観だった。
物騒にも建物周辺には等間隔で杭が撃ち込まれ、立ち入り禁止のテープで囲まれている。
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