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「ここは……」
「覚えているはずだヨ。君は一度任務で来たんだから」
渦月の言葉で思い出す。深夜に緊急で出撃を命じられた例の研究所。
あの日はナビシステムでここまで誘導された。場所や道順を逐一確認した訳ではなく、建物自体の記憶は漠然としている。
無機質な冷たい外壁に見下ろされながら俺は渦月に問い掛ける。
「この研究所だったのか。何でまた同じ場所に?」
目深く被ったフードの奥で口元が緩んだ。
「決まってるだろ?例の犯罪チームがここを寝床にしてると情報が入ったからサ」
「……は?」
渦月の説明を噛み砕いて脳が理解するまで時間を要した。理解は出来ても納得には至らない。
到底受け入れられずに俺は頭を小刻みに振った。
「いやいや、ちょっと待ってくれ。そのチームの1人がここで捕まったやつなんだよな?ならわざわざ拠点にする意味が分からない」
現に研究所としての機能は再開していない。捜査の手も未だ及んでいるはずだ。
渦月も呆れたように肩をすくめた。
「灯台下暗しと言ったところかナ。君の考える通り、同じ場所に戻って来るなんて夢にも思うまい」
風ではためく侵入禁止テープを指で弾き渦月は続ける。
「それにこの通り捜査は警察に移行している。宿り身側が現場を預ければ、危機は去ったも同じ。ここは疑いの目が向かない死角なんだ」
「大胆にも程があるだろ……」
攻めに徹したノーガードのインファイトスタイル。灯台の下どころか中に入ってるじゃねぇか。
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