23人が本棚に入れています
本棚に追加
俺と渦月のやりとりを折坂は難しい顔で眺めていた。
「よく分からないですけど、矢浪の先輩は今回の標的について知ってるんですか?」
問い詰めるように凄みを増した目を向ける。
尋問に答えたのは俺ではなく真剣味に欠けた声。
「知ってるもなにも、今回の標的である流れ星の1人を彼は撃ち破っている」
「……マジかよ」
驚いているのにどこか悔しそうな形容し難い表情を浮かべる折坂に俺は頷きを返した。
「お前、まさか全部自分で手を下すつもりだったのか?」
腕を組み冷たく言い放ったのは鏡だった。
聞きようによっては不可能であると遠回しに言われているようなものだ。
「そりゃそうですよ。俺がやらなきゃ意味がない」
折坂の声も必然的に鋭くなる。
「思い上がるなよ。お前にはまだ早すぎる世界だ。せいぜいサポートにでも徹してろ」
「なんだと……」
両者の視線が激しくぶつかり合う。
ヤンキー同士の喧嘩は見てて素直に怖い時がある。それは限度を超えて相手をいたぶってしまう手加減の無さが原因だ。
自分が上であると証明するためには、叩きのめし、屈服させ、2度と歯向かえないよう恐怖を植え付けるのが最も簡単だ。絶対的な勝利は過剰に相手を傷付ける。
俺は速やかに仲裁に入った。
「お前らその辺にしとけ。鏡はあんまりからかうなよ」
注意するも鏡はそっぽを向いた。
「ふん。あたしは本当の事言ったまでだ」
また煽るような事を……。
「まったく……。折坂も今から先走るなよ。相手の力も未知数なんだから」
「……分かってますよ」
腑に落ちてはいないだろうけど、渋々と折坂は頷いてくれた。
最初のコメントを投稿しよう!