深夜潜入作戦

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 「ほほう。これがジャパニーズニンジャの隠し扉か」  現れた扉にそっと手を触れて(いた)く感動している。観光に来た異国の民かよ。  「お前外人さんだったの?」  「それはトップシークレット」  それだけ言い残して機嫌良く扉を開け中へ入って行く。イントネーションも少し癖があるし、あながち間違ってないかもしれないな。  扉の奥は通路とは違い完全なる暗闇だったが、人感センサーが起動し、進んだ分だけ蛍光灯がつく。  見通しがつき辛い階段を降りながら鏡が壁を数回叩いた。  「ずいぶんと深いな。ここ、ただの研究所じゃないだろ」  反響した音を拾い、おおよその長さを把握したのだろう。常識を疑うような声色になっていた。  「それだけ重要な機密が隠されていたんだヨ。それこそ宿り身に引けを取らないくらいのネ」  任務が終わった後で聞いた話では、地下の存在は公には知らされていないらしい。  知っているのは上層部の人間のみ。地下への入り口も隠されていたように何かと不可解な点が多い。  最後の灯りが点り、白のドアが出迎える。  「ここから先はより用心するように」    渦月がドアノブを捻る。俺は銀のブレスレットに意識を向けた。  重々しく扉を開いた先も模範的な研究所としての体面を保っていた。  通路の両隣にガラス張りの部屋が並び、各々研究が進められている。  機械に守られた卵、培養液に包まれた臓器の一部。青白い光がフロア全体を包み大蛇の瞳が怪しく瞬く。大騒ぎする生き物がいないのは幸いだった。  全体的に不気味な感じはするが想像の域を超えて来ない。隣を歩く折坂が同じ感想を漏らす。  「なんか思ったより普通ですね」  「そうかぁ?十分に気持ち悪いだろ」  小動物や爬虫類が苦手なのか、鏡は露骨に嫌な顔をしながら身をすくませている。一応女の子らしいところもあるんだな。  「ふむ、ところで凍迅狼。君が戦ったのはこの階かナ?」  渦月も予想とのずれがあるらしい。
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