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「正確には分からないけど、ここよりもっと下だったと思う」
爆破した穴から入りひたすら下っていた時もどれだけ深いんだと呆気に取られていた。その記憶に基づけば、あの日はより深い場所にたどり着いてる。
「その地下の様子は?」
「何も無かったよ。誇張無しにただの広い空洞だった」
フードの先をぐっと引っ張り渦月は頭の中を整理していた。
「企画の段階か搬入の遅れか、それとも無理矢理こじ開けたのか?どちらにせよこの研究所はまだ未完成って事か……」
渦月がぶつぶつ唱えている最中、鏡が肘で小突くように訊いた。
「なぁ、あいつって結局何者なんだ」
「……俺もよく分からん」
言動を思い返してみても変わったやつという印象しかない。鏡もグレイスの犬と評していたけど、それ以上の情報は持ち合わせていないようだ。
「だけど人のために裏で戦ってくれてるのは、事実だと思うんだ」
本人には聞こえていないのをいい事に、賛辞の言葉は素直に出て来た。
ただの戦闘狂ってのが大本命ではあるんだけど。
「ふーん」と興味もなさそう鏡が言うと、渦月も思考を切り上げた。
「とりあえずもっと下に行ってみるか。案内出来るかい?」
「そりゃ無理だ。この前はこっちを通ってないからな」
「そうか。床を壊すのも騒ぎになるし、また探すしかないか」
「全体をまだ見てないから案外普通に階段があるかもしれませんね」
折坂の言う通りだ。意外と言っては失礼だけど、こんな状況でも冷静さを保っている。
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