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静寂が辺りを包み、足音も完全には消し切れない。時折実験動物が立てる物音が一々鼓膜を揺らす。
張り詰める空気の中、ピリッとこめかみに電流が走る。第六感センサーが反応した。
「止まれ。ストップ」
小声で制すると全員がその場で足を止めた。
「どうかしたんですか?」
「この先何かあるな。妙な違和感がある」
言い表すなら、高名な絵画に飛び散った一滴のシミのように、意識すればするほど気になる不快感。
渦月は鏡に顔を向ける。
「君はどう思う?」
鏡は首を振り、懐疑的に眉をひそめた。
「あたしは何も感じなかった」
「僕も同じだ。けど凍迅狼が言うのだから間違いないだろう」
勘程度なら期待されても困るところだけど、今は確信に近い。
先頭に立って発生源に向かう。現在地から対角線上のフロアの角付近と見た。
近付くにつれ異物の存在感が色濃く増して行く。
「ほんとだ。あたしにも分かった」
「どうやら、適当なホラを吹いてた訳じゃないみたいだネ」
2人が気付いたタイミングはほぼ同じ。一様に同じ方向に目を向けた。
「つーか、あの距離で感知するとかどうなってんだよ。変態か?」
表面上感心しているようだけど、いかんせん言葉選びが良くない。ただの悪口じゃねぇか。
「俺みたいに基本が出来てないと感覚尖らせるしかないんだよ」
ダメージを軽減する活性術でも使えれば、もっと大雑把になってたかもな。何が功を奏するか分かったもんじゃない。
折坂は1人悔しそうに歯噛みしていた。
「くっそ、全然分かんねぇ。光れ俺のシックスセンス」
唸りながらこめかみに筋が浮べていた。やめとけ血管切れるぞ。
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