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「経験の差だ。昨日今日で出来るもんじゃないよ」
念の為慰めの言葉を掛けると「無念なり」と肩を落とした。
間も無くして目的の部屋へと辿り着く。
『第7検査室』。他の壁面の部屋同様に銀のドアノブを付けた無機質な扉。しかし、明らかに雰囲気が異なっている。
俺は扉に手を添えて意識を指先に集中した。
「これは、誘われてるのかもな」
「うん。僕もそう思う。隠す気が無いし、わざとらしいヨ」
扉の奥で手招きするのは自信の現れか、はたまた別の目的があるのか。
意を決してドアノブを捻ると鍵が掛けられていた。
「渦月、鍵持ってないか?」
「持ってる訳ないだろ」
嫌に即答だった。「馬鹿か君は」と言外に付け足された気分になる。
「なら力づくでこじ開けるか」
ブレスレットの装飾に手を伸ばす。
「ちょいと待った。俺にやらせて下さい」
ずいっと扉の前に立つ折坂。俺は動きを止め、折坂に場所を譲る。
「何か策でもあるのか?」
「まぁ、見てて下さいよ」
無駄にかっこよく流し目を決められ、そのまましっかりとドアノブを握る。
折坂が瞑目した後、カチリとロックが解除される音が鳴った。
「どんなもんです?」
清々しいまでにドヤ顔を見せつけられた。
いつもならイラッと来てるだろうけど、今は驚きが勝った。
「どんな手を使ったんだよ。それも能力の一部なのか?」
「ま、そんなところです」
「ご苦労。では僕から行こう」
慎重に押し開かれた扉。
まず最初に見えたのは電源が付いたパソコンだった。
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