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小ぶりの部屋は蛍光灯が切れたままディスプレイが淡く光を放っている。
パソコンの隣には顕微鏡が据えられ、データのやり取りをするのかコードで繋がっていた。ガラス張りの戸棚には瓶に入った液剤や書類を束ねたファイルが収められている。
ふと、キーボードの近くに無造作に置かれた資料に目が止まった。
「これは……」
各研究所の場所と詳細。衛生写真が添付され、所々に「警備あり」「可能性なし」といった文字が書き加えてある。
その中には大きなバツ印と共に「調査済」の判子が押されたものもあった。
「いやーな予感がするな」
資料に目を落とし鏡は重々しく言った。
俺が対応した武装集団が調査員ならば、武力行使の襲撃に他ならない。
読み進めると資料の後半は個人のカルテとなっていた。白シャツ姿の顔写真がどれも添付されている。
折坂がその中の1つに目を止めた。
「こいつ、知ってる。何度か顔合わせた事あります」
折坂が手に取ったその写真に上塗りされたバツ印。その意味に誰も口を挟む事は出来ない。
それ以外にも数名バツ印はあったが折坂の知り合いではなかった。
だが、それに安堵したのも束の間。
最後の1枚は俺達も見知った、目の前にいる男の名前があった。
今より幼く、変わらず生意気そうな顔立ち。寸分違わぬ折坂草介の名前。
俺の手から資料を奪い取りわなわなと折坂は震えた。
「野郎……ふっざけやがって」
ぐしゃりと折坂の手で資料が歪む。
一瞬だったけど、俺は間違いなく目にした。
数ある項目の中の1つ。
『磁力体質』の文字を。
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