深夜潜入作戦

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 何故折坂の情報が研究所の資料に織り込まれているのか。  磁力体質の意味するところとは。  ともかく折坂に言葉を投げ掛けようとしたその時、  世界が暗転した。  「なっ!?」  平行感覚が狂い、両足が床から切り離された錯覚に陥る。  踏ん張りが効かないと肝を冷やしたのは一瞬で、すぐに足に体重が乗る。  「ん、あれ?」  認識のずれが脳の混乱を引き起こした。足裏に伝わるのはリノリウムの緩やかな反発ではなく野外に降り立った際の不揃いな感覚。  気が付けば景色は一変していた。  パソコンも資料が置いてあった机も、壁どころか部屋そのものが世界から消えていた。  目の前には過放次元特有の薄暮のような世界に、どこまでも広がるくすんだ荒野。  明らかにさっきまでとは別の場所に俺達は立っていた。  「何が、どうなってんだ?」  満遍なく周囲を見渡して折坂が絶句する。目を擦ってみても見えているものは変わりはしないだろう。  俺は可能性の1つを静かに提示する。  「これは、飛ばされたか?」  「まぁ、そんなところだろうねぇ」    劇的な環境の変化を前にしても渦月は落ち着いたものだった。  折坂はまだ状況を飲み込めていない。当然だと言える。  「矢浪の先輩。何が起こったんですか?」  どう説明するのが正解か悩み、後頭部を乱暴に掻く。  「簡単に言うと別の次元に飛ばされた。場所も変わってる。誰かが術を発動した感覚は無かったから、予め仕込まれてた結界式のトラップだろうな」  部屋に入る前の違和感はおそらくブラフ。飛ばされるまで仕掛けに気付く事さえ出来なかった。
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