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「しかも過放次元のゲートと転移術の組み合わせ。これは中々の難敵かもしれないな」
思わず感心している俺に鏡は苛立ちの声を上げる。
「まんまとしてやられたんだ。笑ってる場合じゃねぇだろ」
鏡の言い分は正しく、異変はすぐに訪れた。
地を這うような低音が周囲を包む。漂う音の波はひたすらに大きい。
「来るぞ」
地平線に目を向けながら右手の人差し指の指輪を外す。
鏡の魔力解放を皮切りに、四方から黒の大群が押し寄せて来た。
最初は人間のようにも見えたが、目を凝らせば人型の異生物だった。一様にボロボロの布切れを纏い腐りかけの手足を晒している。
亡霊のごとく近付くそれらの背後には、小山のように大きな四足獣。爛々と輝く赤い目に、獲物に突き刺す巨大な牙。だらりと涎を垂らし、薄汚い体毛を振るわせた。
渦月は巨体に関心を示したらしく、
「あのデカブツは骨がありそうだ。僕が貰った。あとはヨロシク」
疾風を残し、渦月は四足獣の元へ飛んでいく。ワンマンプレーではあるけど、面倒はあいつに任せよう。
鏡は自分で何とかなるだろう。問題は折坂だ。
「折坂は俺の後ろに……」
「その必要はないです」
手の平を突き出してはっきりと断られた。
折坂は腰をまさぐって黒い棒状のグリップを取り出す。ボタンを押すと銀の本体が5段階に分けて伸びた。
携帯式の警棒。一般の同一物と比べると遥かに長い。
左右斜めに獲物を振り、頬を吊り上げると折坂は高々と声を張り上げた。
「さぁて、折坂草介の初陣だぜ!」
事もあろうに折坂は自ら敵の元へ突っ込んで行った。
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