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「ああっ?てめぇいい加減な事言ってっと本気でボコボコにすんぞ?」
「ええっ……こっわ……」
カッと見開いた目の先で何やら鏡が怖気付いている。そんなに強く言っただろうか?
なんて冗談を言っている場合じゃないな。
式神単体ではさほど驚異ではない。まともに攻撃を受けない限り、瀕死の重傷を負う事もないだろう。
問題はこちらの体力だ。
どうにか成立している防衛も際限が無ければいずれ破綻する。永遠に動き続ける事は出来ない。
ならば攻めに転じて一掃出来るか。これにも疑問が残る。何かしらの魔術で出現しているなら原因を明るみに出さなければ、このまま罠にはまったままだ。
兎にも角にも、終わりが見えない。早く解決の糸口を見つけ出さないと。
「矢浪の先輩!そろそろきつい!」
救難信号を受け取る。折坂の姿は黒の群れに飲まれかけていた。
「折坂!こっちに来い!」
氷爪を2発飛ばし逃げ道を切り開く。
一目散に逃げて来た折坂を式神は猛然と追いかけた。
「どうすんですかこれ」
額に汗を滲ませ、息も乱し始めている。その不安は見通しが立たない未来を思っての事か。
手頃にいた数体を片付け、俺は2人に告げた。
「俺に考えがある」
「まじですか」
小さく首肯する。
「お前らに頼みたいのは1つ。俺が行動に移したらしばらくじっとする事。いいな?」
「分かったから、さっさとやってくれ」
ぶっきらぼうな言葉とは裏腹に期待の色が見えた。
可愛くねーなと思いながら、気を引き締める。失敗したら後が怖そうだ。
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