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折坂と鏡は氷壁に隠した。今、この場において標的となっているのは俺1人。
対象を俺のみに絞り、地に落とさんと手を伸ばし、怨嗟の声を叫ぶ式神。
彼らはルールに従っている。
敵には攻撃を。ただそれだけ。
命という概念を自らに課していないのか、防御行動は一度たりとも見ていない。
俺は一度に全てを視界に入れた。
写真のような一枚絵を瞬時に脳に焼き付ける。
集中力を極限に尖らせた。
全体の流れに逆らう、異物はいないか。
1つずつ精査するのではなく、探し出すのはとても小さな違和感。
その中に唯一無二の絶対のルールを犯しているものがいた。
与えられた役割を、俺を亡き者にする執着を放棄して、
その一体だけが身を守るように後ろに下る。
「あいつかっ!」
ようやく見つけた。手間取らせやがって。
標的に狙いを定め、魔力を込めた左手を右手で強く固定する。
狙われていると気付き慌てて背を向ける。それが最後の答え合わせだった。
「『イクサ』!」
名を叫び顕現する緑色の目をした氷の大狼。
近辺の式神もろとも巻き込み、圧倒的な質量で押しつぶす。
氷の破片が飛び散る中、全ての式神が一斉に水を浴びた泥人形のように崩れ落ちていく。
最後に残ったボロ布を被った魔術の発生源。咄嗟に式神を操り盾として扱ったのかまだ息がある。
よろけながらこの場を去ろう走る敵に最後の手を下したのは鏡だった。瞬きを許さない速さで追撃し右の拳を叩き込む。
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