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上から見ると圧巻の速さだ。思わず「はえー」と口に出してしまう。
鏡の冷めた目で見下ろされ、最後の一体は幾何学模様を浮かべて粒子となって消えた。
氷から飛び降り、その場に立つと1枚の札が地に落ちていた。
この世界には存在しない文字と円を基盤とした複雑な魔術式。札は灰も残さずに燃え散った。
「式神本体が式神を量産してたのか」
通りで単調、そして脆い。だけど数で有利を押し付けて来るのはシンプルに脅威ではあった。
「お2人ともご苦労さんです」
遅れて折坂がやって来る。何故少し上からなんだ。
鏡も同じように思ったのか、折坂に冷ややかな目を向けた。
「のんびりしやがって。ずいぶんと重役出勤だな」
「いやいや、姐さんが速すぎるんすよ」
矛を収めてもらおうと苦笑する。鏡の速さについては俺も異論はない。
鏡の速さの秘訣について勝手に考察していると、遠くから轟音が鳴り響く。
すっかり忘れていた。渦月は別に動いていたんだ。
佳境に差し掛かかっていたらしく、上空から魔術で引き起こした風の大渦を叩き込む。
残り体力も僅かな四足獣はそのまま潰され、痙攣した後に動かなくなった。
役目を終え、渦月が戻ろうとする。
その直後の事だ。再び視界が真っ暗になり、似通った浮遊感が体を襲う。
目の前にはパソコン。そして薄暗く狭い部屋。4人揃って元の場所に戻っていた。
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