23人が本棚に入れています
本棚に追加
「あれ、戻ってる?」
左右に首をめぐらせ、折坂はつま先で床を鳴らした。小気味良い音は粗野な大地からはかけ離れている。
「どうやら殲滅が帰宅条件だったみたいだネ」
「対象物を破壊しないと帰れない的なやつか」
魔術には詳しくないけれど、別次元に飛ばすトラップにはよくある手法らしい。維持は大変だから仕掛けは簡単にするとかなんとか。
「それとも他に……ん?」
渦月の目に何かが止まる。話を途中で切り上げると机の上にあった紙を手に取り、しばしそれを眺めた。
「どうした渦月。何か書いてあったのか?」
「うん。中々に興味深い」
皆に見えるように机に置き直す。
「『本日正午、下記の場所にて過放次元の続きを執り行う。今度は私が直接手を下す』。なんだこりゃ」
折坂が読み上げ片眉をひそめた。
余白にはパソコンで打ち込まれた文字で住所が記され、その他の情報は無い。
「これをどう見る?」
紙を指差し、鏡が訊いて来た。
「ほぼ間違いなく俺達を飛ばしたやつだろうな。場所を変えて本格的にやり合おうって腹か」
「どの道、敵陣に赴く事になりそうだ」
さっきの過放次元が良い例だろう。予め用意された戦場は相手に優位に働く。
不安を吹き飛ばすように、折坂は拳で手の平を打つ。
「そいつをぶん殴られるなら、行くしかないでしょ。怖気づいてるなら俺は1人でも行きますよ」
折坂の目は静かに復讐の色を燃やしている。
例の敵になるとどうも見境が無くなるらしい。親しい人物が襲われてるから無理もないけど、1人で行かせられる訳もない。
最初のコメントを投稿しよう!